2013年に夫が脳梗塞で倒れ、私たち夫婦の3年にわたる苦しみと喪失の日々が始まりました。2016年に夫が亡くなり、未亡人という落ち着くことのできない役につくと、私にはさらに大きな苦難が続いて、私は絶望に陥ってしまいました。あなたは、いつ終わるという見通しがなく、苦しみが増すばかりの人を、どのように助けることができるでしょうか。
カウンセリングの一般原則
心から愛しましょう。あなたが相手にしているのは、自分の世界が崩れてしまい、あなたに助けを求めに来た人です。でも、あなたが同情にあふれ、カウンセラーとして有能な人だと、つまり、あなたが彼女の苦しみを裁いたりせず、キリストにある希望を着実に示してくれる人だと信じることができなければ、彼女は心を開こくことはないでしょう。
語る前に、良く聞きましょう。彼女の失ったものについて、また、それが彼女の生活にどう影響を及ぼしているかについて耳を傾けましょう。長期にわたる苦しみには、段階や区切りがあり、人はそれぞれの段階で神学的な質問を抱くことを認識しましょう。
- 危機
- 失ったものの大きさや永続性を体験(痛感)する時期
- それによる大きな変化がある時期(世界観の変化も含まれることがある)
- 新たな、あるいは、さらなる苦しみや悲しみが訪れる時期
各段階で、以下のことをチェックしましょう。
- 彼女はどんな身体的、霊的な困難に直面していますか。あなたはカウンセラーとして、どの点を話し、対処したら良いでしょうか。他の人には何を委ねるべきでしょうか。
- 彼女は向き合わなければならない変化にどう対応していますか。彼女にとって何が最も困難でしょうか。それはなぜでしょうか。彼女の主な苦悩は、罪人としての苦悩なのか、苦しみにある人としての苦悩なのか、どちらでしょうか。
- 彼女が自分の心を打ち明けることに正直であること(あるいは消極的であること)から、彼女の信仰についてどんなことが分かりますか。彼女の神への信仰や忍耐を強めるために、あなたはどのように彼女を導くことができるでしょうか。これがあなたの一番重要な役割です。
- 怒り、恐れ、絶望といった否定的な感情のパターンを観察しましょう。彼女の感情から、彼女が最も必要だと信じていることについて何がわかりますか。
- 神は自分のことをどう見ておられると彼女は感じていますか。彼女は信者ですか。彼女は自分のアイデンティティーをどこに見い出していますか。自分の役割が変わったことで、彼女の自己イメージはどう変わりましたか。
- 彼女は苦しみの中で、神とどのように関わっていますか。また他の信者とはどのように関わっているでしょうか。
- 彼女はどのような疑問を持っていますか。特に神について、どのような疑問を持っているでしょうか。
- 神は滅多に説明をされませんが、「なぜ」という質問には、神の御性質を信頼すべき理由をあげて答えてくださいます(例:ヨブ38-42章)。彼女はこのような神とのやり取りを受け入れていますか。それとも彼女は答え(説明)を要求していますか。また、自分の計画と違っていても、神のご計画に従う意思が彼女にはありますか。もし従いたくない場合、彼女は生きる目的や平安をどこに求めているのでしょうか。
- 根本的な質問に耳を傾けましょう:神様は私を愛しているの?神様は私を助けることができるの?(こうしたことを問う、心の葛藤の深さや意義については、この記事では取り扱いません。)ここでは簡単に、福音がこの両方の質問に答えることを記します
- キリストの十字架での死が神の愛を証明しています。それは私たちが自分の力で獲得するものではなく、神からの無償の贈り物です(ヨハネ3:16; ローマ5:8, 12; 8:37-39)。
- 復活が彼女を助けるに十分な神の力を証明しています(エペソ1:18-21)。
- 彼女はこれらの真理にどう応答していますか。彼女がこれらのことを信じるのを妨げているのは何ですか。彼女の答えについて議論せず、彼女が正直であることに感謝しましょう。
- あなたは彼女に、祈りと恵みと優しさにあふれた簡潔な返答をしましょう。
聖書を用い、注意深く言葉を選んで語る
彼女の話を聞きましょう。たとえあなたに彼女と似たような経験があったとしても、彼女の苦しみや彼女の心を理解していないと考えましょう。叱らずに、難しい質問をさせてあげましょう。耳を傾け、彼女の苦しみについて学びましょう。
キリストに似た悲しみの表現をしましょう。彼女の人間としての弱さを非難せずに、彼女の辛い試練を認めましょう(IIコリント12:8-10)。彼女の涙を優しく受け止め、その場で彼女を元気づけようとすることは避けましょう(箴言25:20)。彼女が自己憐憫に陥らないように導きながらも、彼女の悲しみを尊重しましょう。
口先だけの言葉は避けましょう。「きっと大丈夫になるから」などという言葉は避けましょう。あなたには、壊れてしまったものを元に戻す力はありません。あなたにはカウンセラーとして、もっと永遠の目的があります。生きる上で問題だらけの堕落した世界にあって、彼女が神と共に歩めるように助けるのです。彼女の話から例を挙げて、神が聴き手であり、思いやりのある方であることを指し示しましょう。
聖書によって彼女が神に向かうようにしましょう。彼女の差し迫った疑問について、神の視点や御心を啓示している短い聖書箇所や聖書の例を彼女と一緒に見てみましょう。そのみことばが今の彼女にどのように響いたか聞いてみてください。それらの聖句を少しずつまとめ、彼女の疑問や葛藤に合わせた「役に立つみことばのリスト」を作ります。毎朝、毎晩、そのリストを読むよう、彼女に勧めましょう。リストは、例えば、次のような文です。「神はあなたと共におられます。あなたは一人ではありません。」「わたしは決してあなたを離れず、またあなたを捨てない」(へブル13:5後半)。
静かに、思いやりと優しさを示しましょう。強烈な苦しみは耐えがたいものであることを理解しましょう。彼女の精神的、感情的な負担が非常に重いことを尊重します。自分の考えを宣言したり、いろいろと指導したりすることは避けましょう。神の誠実さについて話し、聖書が彼女に語りかけるようにします。希望を持てるような質問をし、シンプルで実用的な提案を心がけましょう。あなたが行っているカウンセリングを、彼女はどう思っているのか、どのように活用しようとしているのか尋ねましょう。彼女が行動するのはどういう時で、その行動を動機づけているものは何でしょうか。彼女の信仰が見えますか、それとも疑いが見えますか。落胆や疲れが見えますか。記憶が困難だったり、絶望したりしていますか。あなたは臨機応変に対応しなければなりません。
希望を育み、ネットワークを築くと助けになる
- あきらめないで前進し続けるように励ましましょう(IIコリント4:16)。
- 必要であれば、彼女の避け所となるような、静かになれる場所を提供したり、提案したりしましょう。
- 祈るように教えましょう。また、彼女のために祈りましょう。
- 彼女の教会に実用的、霊的な助けをしてもらえるように協力を求めましょう。
- 彼女は、取るに足らないわけでも、役に立たないわけでも、台無しになったわけでもなく、神は彼女を愛しておられ、彼女のために目的を持っておられることを伝えましょう(ピリピ1:6)。
- キリスト、ペテロ、ヨハネ、ヨブ、またその他の人々の人生においても、苦難は神の恵みの証拠であり、神がその人たちを非難されてのことではなかったことを伝えましょう。彼女は傷つけられているのではなく、より深い者とされているのです。
- 彼女が霊的に成長するにつれ、今度は彼女が他の人に助けの手を差し伸べるように、助けましょう(IIコリント1:3-6)。彼女が自己に没頭したり、孤立したりすることを避けます。
振り返りの質問
- 長く続く試練のそれぞれの段階において生じる問題を理解していくにはどうすればよいでしょうか。
- 長引く苦難の中にある人をカウンセリングする際に、神のあわれみをより良く反映するには、どのような工夫ができますか。
- 相手が苦しみに圧倒されているとき、彼女の主な疑問に答えるために用いる、みことばや聖書の例の使用をどのように簡素化できるでしょうか。
参考文献
Dark Clouds, Deep Mercy by Mark Vroegop (Crossway, 2019)
God’s Healing for Life’s Losses by Bob Kellemen (BMH Books, 2010)
God’s Grace in Your Suffering by David Powlison (Crossway, 2018)
Craving Grace by Ruthie Delk (Moody Publishing, 2013)
New Morning Mercies by Paul David Tripp (New Growth Press, 2014)
Did I Say the Right Thing? By Mitch Schultz (Exalt Publications, 2011)