次の人々に共通しているのは何でしょうか。
頭にコショウをかけられたような感じがするナイジェリア人
肩と胃の痛みを訴える中国の農民
胃が焼けるようだと語る韓国の女性
胸がキュッと締めつけられていると感じるイラン人
悲しみに終わりがないと感じるアメリカ人 1
この人たちはみな、うつを表現しているのです。
『痛みをどう理解するかは、痛みをどう経験するかに影響します。』
ハワイに留学中の日本人学生と白人のアメリカ人学生が、うつと聞いて連想する言葉を聞かれました。日本人学生の回答は多い順に、雨、暗い、心配、灰色、自殺、孤独、試験でした。白人のアメリカ人学生の回答は、悲しみ、孤独、落ち込む、不幸、不機嫌、低調、暗いでした。日本人学生の回答は外を向いた言葉、白人のアメリカ人学生の回答は内を向いた言葉であることに注目してください。
日本では、自殺についての文化的な議論が続いています。自殺は選択であると主張する人もいます。自殺は自らの命についての意志表明であり、家族に迷惑をかけないで恥に対処する方法だと言うのです。この場合自殺は、思考がはっきりとしている人の取る大胆な行動です。アメリカ人は一般に、自殺はうつが治療されなかったか、うつの治療に効果がなかった場合の、避けることのできない結果であると考えます。
日本人学生に落ち込んだときにどうすれば元気になれるかと尋ねると、家族や周囲の人が元気にしてくれると考える傾向があります。アメリカ人は個人的な成功によって元気になれると考えます。
このような研究から言えるのは、うつ病は、普遍的な、決められた遺伝子の組み合わせによって引き起こされる神経細胞の発生パターンではないということです。少なくとも、文化的な背景によって形成される個々の経験がうつに影響しています。うつの上には物語があるのです。ある文化では、うつは正常な体験であり、個性や力を育む成長過程に含まれるというような物語です。また、アメリカのように、うつは脳の病理であって、早く治療しなければ患者は再起不能になってしまうと語る文化もあります。
痛みをどう理解するかは、痛みをどう経験するかに影響します。もし胸の痛みが筋肉の張りによるものなら、あなたはトレーニングをしていることを誇りに思うでしょう。でももしそれが腫瘍や初期の心不全によるものだと思えば、痛みはずっとひどくなるのです。
『神の啓示が素晴らしいのは、ひとつには、この世にあって私たちには苦難があると知らされること、ふたつには、苦難の原因を知る必要はないと教えられることです。』
ある悲しみを経験しているときも、もし神が自分とともにいて、愛をもって自分を取り扱っておられるのだと信じているならば、その悲しみはそこまで大きく感じられないでしょう。けれどももし、自分の苦しみが単に神経の問題であるならば、正しい薬が処方されることを期待する以外にできることはないことになります。
うつに対する私たちの(つまり、アメリカの)文化的な解釈は、うつは精神疾患であり、投薬と認知療法で対処するのが最善だというものです。今までずっとこのように解釈されてきたわけではありませんし、この解釈が今後もずっと続くとは限りません。現代精神医学の西洋的な見解が世界を席巻しつつあり、より多くの文化で現代の診断に歩調を合わせつつあるのは確かですが、うつを単に精神病と片づける「物語」は不完全で満足できるものではありません。これは私たちの家族、文化、宗教的な背景を無視するものであり、うつをこのように捉えて治療しているからといって、私たちの社会が精神的により健康になっているわけでもないのです。
人間は複雑です。
多くの疑問があります。
知らないことがたくさんあります。
私たちはどうすれば良いのでしょうか。
私たちはここで普遍的なものに目を向けるべきです。文化より深いもの、聖書によって私たちに啓示された神に目を向けるのです。神の啓示が素晴らしいのは、ひとつには、この世にあって私たちには苦難があると知らされること、ふたつには、苦難の原因を知る必要はないと教えられることです。キリストの慰めを互いに知らせ、キリストの約束への確信を強め、キリストにとどまって実り豊かになるように互いに助け合うのに、苦難の原因を知っている必要はありません。そしてこれは、あらゆる文化のすべての人に当てはまる真理なのです。
『キリストの慰めを互いに知らせ、キリストの約束への確信を強め、キリストにとどまって実り豊かになるように互いに助け合うのに、苦難の原因を知っている必要はありません。』
異文化にまたがる研究によってわかるのは、うつ(苦しみ)の範囲には幅があるということです。中学1年生の彼氏にふられることも、原因不明の体の痛みに悩まされることも、余命1年の病気を宣告されることも、苦しみに含まれます。このような広範囲の苦しみのどこにいても、私たちは希望をもつことができるのです。それは、イエスにおいて私たちに最善を示してくださった神は、これからも私たちに最善を示してくださるという希望です。もちろん、このような霊的な現実を明瞭に見るためには、御霊の助けが必要です。私たちは賢者の勧めに耳を傾け、熱心にみことばから養われることを願うべきです。そして、自分の人生を楽にしてもらうことばかり神に望んでいた「物語」に気づいたときには、その都度悔い改めると良いでしょう。みことばに聞き、悔い改める。こうした点で成長するにつれて、私たちは神の国の物語が他のどの物語よりも遠く、深くへ届くことを改めて学ぶでしょう。その結果私たちは、文化的にどのような背景であったとしても、苦難の中で真の希望を知ることができるはずです。
これを踏まえて、私たちはどうすれば良いのでしょうか。うつのときにどうすべきかという明確な指針が得られるわけではありませんが、神が私たち一人ひとりの苦難に特別な関心を寄せておられることは確かです。小さなことに目を留められる神、すなわち多くの人、多くの文化の中にあって、私たち一人ひとりに気をかけてくださる神は、一方で大きなこともなさいます。苦難に対して、神はただ単に、ある文化に特有な理解を与えられるわけではありません。そうではなく、神はすべての人間の苦しみの核心に語りかけられるのです。このように理解すると、神がどのようなお方であり、何を語っておられるのかに対する私たちの確信が強められるでしょう。
脚注
[1] Ethan Watters, Crazy Like Us: The Globalization of the American Psyche, New York: Free Press, 2010.
参考文献
- Laurence J. Kirmayer, “Psychopharmacology in a Globalizing World: The Use of Antidepressants in Japan,” Transcultural Psychiatry, Sept. 2002, 39 (3), 295-322
- Junko Tanaka-Matsumi and Anthony J. Marsella, “Cross-Cultural Variations in the Phenomenological Experience of Depression: I. Word Association Studies,” Journal of Cross-Cultural Psychology, Dec. 7 (4). 379-396.
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