鬱の中の神の御業

ジョン・パイパー(著者)、ブラッシュ木綿子(翻訳)-  2023年 02月 28日 - 

以下は、『Ask Pastor John(ジョン先生に聞く)』というポッドキャストの収録内容を文章に起こしたものです。

今日は匿名の女性からの質問です。「ジョン先生、こんにちは。私は普段は楽観的で元気な人間です。でも最近、朝ベッドから出るのも億劫なのです。ベツレヘム大学・神学校の学生で、神様が与えてくださっているすべての学びにとても感謝しているのですが、授業に行きたくありません。この学校に来るためにわざわざ遠方から引っ越してきたのにと思うと、落ち込んでしまいます。神様はまだ私にここにいるように望んでおられることを疑っていませんが、今の私の態度や生き方はとがめておられるだろうと思うのです。

これは鬱なのでしょうか。何に対しても、ほとんどやる気が起きないのです。祈っていますし、これからも神様が私の力となってくださることを祈り続けますが、戦う気力がないときに、どのように戦えばよいのでしょうか。毎朝、このままずっとベッドにいたい、人生に向き合いたくないという思いで目が覚めます。でもこんな気持ちでいるのは本当に嫌いです。神様が私の人生に持っておられる御心を以前は喜んでいたのに、それが失われたように感じます。暗いこの世界に押しつぶされ、逃げ道がないように感じるのです。難しい質問に答えてくださってありがとうございます。悪魔との戦いに立ち向かっているのは自分一人ではないと覚えたいと思います。」

暗闇に囲まれて

あぁ、この方の境遇にとても共感しますよ。私もこのようなときが何度もありました。ベッドから出たくない、しなければならないことを、とてもじゃないけどしたくない、何にもやる気がおきない、戦う気力がない、神の召しに対する喜びが失われた、悪魔的な暗闇に圧倒されている、という感じなんですね。

これが今の彼女の状況ですけれども、私も似たような経験があります。今すぐに手を差し伸べてあげたいと感じます。

『神があなたの耐える力を試されるのは、あなたを愛しておられないからではありません。』

彼女は「これは鬱ですか」と聞いていますね。もちろん、それに対し私は「わかりません」と答えるしかありません。それを判断できるほど近くにいないからです。彼女のことをよく知りません。お名前をおっしゃらなかったので「あなた」と呼びかけますけれども、もしあなたに鬱を患った経験がおありなら、今経験していることがそれに当てはまるか、たぶんお分かりになると思います。もし鬱を患ったことがないなら、これは鬱だとすぐに決めつけることは避けた方がよかろうと思います。

心と体はとても複雑

鬱は簡単に白黒をつけられる病気ではありません。精神の落ち込みには幅があり、その一番ひどいものは、本当に生気を吸い取られるような鬱状態であって、もちろん、これに警戒して欲しいと思います。

もし今の状態が続くようであれば、お医者さんに行くことをお勧めします。そして、例えば単核(球)症とか、他の栄養上の問題がないかどうか、確かめてもらうといいでしょう。人間は霊と身体でできています。身体の問題で気力や精神に重大な影響が出ることもあるのです。

もしあなたと一緒にいるとしたら、私はあなたに最近眠れているかどうかとか、運動の習慣や食習慣などを尋ねたことでしょう。私たちが疲れてしまう要因はたくさんあります。肉体的な原因で疲れていても、精神的、霊的な問題だと感じてしまうことも多いのです。

今までかかった病気や今の健康状態など、ご自分の身体のことについては、あなたが一番分かっていると思うので、必要であれば医者にかかるなり何なり、助けを得て欲しいと思います。私としてはここで、霊的な助けを提供できればと思います。とても素晴らしい聖書の真理で、神はこの真理を、あなたを助け、強めるために与えてくださっていると思うからです。

耐える

『私たちにとっては遅く感じられるときであっても、神がなすべきことをしてくださるまで主を待ち望むことが、信仰者の従順の大部分を占めるのではないでしょうか。これは私の経験からも言えることです。』

コリント人への手紙10章13節に、「あなたがたが経験した試練はみな」とあります。大学でギリシャ語を学んでいらっしゃるので「誘惑」と「試練」はギリシャ語では同じ単語だと知っていますね。この箇所はこう続きます。「あなたがたが経験した試練はみな、人の知らないものではありません。神は真実な方です。あなたがたを耐えられない試練にあわせることはなさいません」。そして、「試練とともに脱出の道も備えていてくださいます」とあるのですが、鍵となるのがこのフレーズ、神が脱出の道を備えてくださるのは、「むしろ、耐えられるように」するためだという部分です。

大切なのは単に脱出できることではなく、耐えることができる点なのですね。耐える能力こそが、神の備えてくださる脱出の道なのです。あなたを今この試練にあわせておられるのは神であられること、そして神は、あなたが耐えられないような試練にはあわせられないことを覚えてください。

愛の訓練

神があなたの耐える力を試されるのは、あなたを愛しておられないからではありません。

この点はへブル人への手紙12章6節にはっきりと書いてあります。神はご自分の子どもを愛しておられ、その愛する者を訓練されるのです。神は子どもを喜んでおられるのです。 神が私たちを訓練されるとき、それは愛する息子、愛する娘を訓練されているのだというのは、驚きではありませんか?

神があなたに敵対しておられるからこのような試練にあっているのだという悪魔のささやきを信じてはいけません。これは地獄のささやきです。天国からではありません。「あなたがたはヨブの忍耐のことを聞き、主によるその結末を知っています。主は慈愛に富み、あわれみに満ちておられます」(ヤコブ5:11)。

主を待ち望む

詩篇40篇1-3節に暗闇から抜け出せず、主を待ち望んでいるダビデの姿が描写されています。私たちにとっては遅く感じられるときであっても、神がなすべきことをしてくださるまで主を待ち望むことが、信仰者の従順の大部分を占めるのではないでしょうか。これは私の経験からも言えることです。

みことばを何度も読み返す

『クリスチャンが試練を通り抜けるには、大きくて強い神の力によって支えられる必要があるのです。』

神のことばである聖書は、こうした試練のときにこそ読むべき本です。聖書にこんなことが書いてありますよ。「かつて書かれたものはすべて」、驚きですよね、聞いてくださいね、「かつて書かれたものはすべて、私たちを教えるために書かれました。それは、聖書が与える忍耐」、「忍耐」、これがキーワードです。あるいは、困難の中で歩みを進めていくことによってということですが、「忍耐と励ましによって、私たちが希望を持ち続けるためです」、と書いてあるんです(ローマ15:4)。

できるなら、ほんの数節でもいいので、毎日みことばに触れるようにしましょう。戦う気力がないときも、みことばの薬を毎日飲むといいですよ。

神の力に支えられる

神の力のみ、神の最強の力のみが、あなたが今通っておられるような試練の中で私たちを支えることができると覚えましょう。

と言うのも、私は何度もコロサイ人への手紙1章11節でハッとさせられているからなんですね。ここでは、「(あなたが)神の栄光の支配により、あらゆる力をもって強くされ(ますように)」と言われているんです。何のためかというと、「どんなことにも忍耐し、寛容でいられ(るように)」ということなんですね。つまり、忍耐と寛容のためには神の力が必要だということでしょう。

忍耐するのも寛容でいるのも小さなことだと思うでしょう。でも、あなたは決して小さな戦いを戦っているのではないのですよ。クリスチャンが試練を通り抜けるには、大きくて強い神の力によって支えられる必要があるのです。

神はあなたをご存知である

覚えていますか。神は私たちの成り立ちをご存知で、私たちが土のちりにすぎないことを心に留めてくださっています。詩篇103篇はいいですよ。13節にはこう書いてあります。「父がその子をあわれむように / は ご自分を恐れる者をあわれまれる」。主は 私たちの成り立ちを知り 私たちが土のちりにすぎないことを 心に留めてくださる……。人間が何とももろい存在であることを神がご存知で考慮してくださるというのは、驚きではありませんか。

神の約束を書き出す

最後にもうひとつアドバイスしましょう。神の約束を具体的に1つか2つ、握りしめましょう。紙に書いて、ポケットやお財布に入れておくのです。いつも持ち歩いて、必要なときに取り出して読みましょう。暗記してもいいですね。何度も自分に言い聞かせるのです。繰り返して。具体的な約束を掲げて、自分はイエスにある者だと宣言するのです。このポッドキャストでの回答を終えるにあたって、あなたのために神の約束が2つ思い浮かびました。

『神は真実な方です。必ずやみことばの通りにしてくださいます。』

1つ目は詩篇139篇11-12節です。「たとえ私が 『おお闇よ 私をおおえ。/ 私の周りの光よ 夜となれ』と言っても / あなたにとっては 闇も暗くなく / 夜は昼のように明るいのです。/ 暗闇も光も同じことです」。あなたにとっては暗闇と感じられることも、神にとっては暗闇ではありません。神は明るい光の中におられ、あなたの面倒をどのように見ればよいのか、よくご存知なのです。

2つ目はイザヤ書43章2-3節です。「あなたが水の中を過ぎるときも、わたしは、あなたとともにいる。川を渡るときも、あなたは押し流されず、火の中を歩いても、あなたは焼かれず、炎はあなたに燃えつかない。わたしはあなたの神、、イスラエルの聖なる者、あなたの救い主であるからだ」。イスラエルの民にこのみことばが真理であったなら、イエスにある者にとってはなおさらのことです。

これが私の祈りです。神は真実な方です。必ずやみことばの通りにしてくださいます。


This article has been translated and used with permission from Desiring God. The original can be read here, God’s Work in Your Depression.
この記事は「Desiring God」から許可を得て、英語の原文を翻訳したものです。原文はこちらからご覧いただけます:God’s Work in Your Depression