時にかなった美しさとは

漢字の向こうに聖書が見える:2023年6月

ブラッシュ木綿子(著者)-  2023年 06月 01日 - 

つらい、苦しいときが続いても、
神の計らいの美しさが、きっと

今月の漢字は「美」です。「美」は、「羊」と「大」の組み合わせで、大きくて立派な羊を表します。中国では昔から、家畜の中で羊が一番美しく、性質も良い動物だとされていたので、「美」は「うつくしい、おいしい、よい」の意味になりました。聖書の世界でも羊は大切な家畜でしたが、臆病で迷いやすく、だからこそ羊飼いが必要な動物と考えられていました。聖書の世界で漢字が考案されていたら、「美」、「善」、「義」といった良い意味の漢字に、羊は使われなかったでしょうね。

聖書で美しいとされているものに、「神のなさること」があります。今月の聖書のことばは旧約聖書の「伝道者の書」という本に書いてあることばです。「伝道者の書」の三章では、すべてのことに時があるとして、「生まれるのに時があり、死ぬのに時がある」、「求めるのに時があり、あきらめるのに時がある」、「黙っているのに時があり、話すのに時がある」などと書いてあります。そして「神のなさることは、すべて時にかなって美しい」と続きます。

漢字の向こうに聖書が見える:美
神のなさることは、すべて時にかなって美しい。(伝道3:11)

私の大好きな小説「ハイジ」では、都会生活になじめないハイジが重いホームシックにかかってしまいます。一度は自分で家に帰ろうとするハイジですが、その時は願いがかないません。その後ハイジは心の病と闘いつつ、字を覚え、祈りを習い、聖書の話を学びます。医者の診断がついて、とうとう帰郷できた時には、①持たせてもらったお金で(ヤギ番ペーターの)おばあさんに毎日白パンを買う、②おばあさんに祈りの本を読む、③アルムのおじいさんに聖書の話を分かち合う、ことができました。特に③は、心を閉ざし、神とも人とも付き合わずに暮らしてきたおじいさんが、心を開いて神と人と和解するきっかけとなりました。帰郷が延びたことでハイジはとても苦しんだのですが、もしすぐに帰れていたら、こうした素晴らしいことは起きませんでした。「ハイジ」はもちろんフィクションですが、クリスチャンだった作者のシュピリは、物語を「神のなさることは、すべて時にかなって美しい」の例話のように書いたのではないでしょうか。

世界では毎日色々なことが起こります。戦争があったり、地震があったり、とても美しいとは思えないこともあります。私たちの人生も山あり谷ありです。実は、今月の聖書のことばは、「神のなさることは、すべて時にかなって美しい。⋯⋯しかし人は、神が行うみわざの始まりから終わりまでを見極めることができない」と続きます。神のなさることはすべて美しいけれども、私たちにはそれがわからないことも多いということです。後になって「やはり、神のなさることはすべて時にかなって美しいのだ」と言えることもあるでしょう。でも、死ぬまでわからないこともあるのです。つらい時、苦しい時に、聖書のことばを思い起こしていただきたいと思います。この世界は、公正で、誠実で、善良で、愛と恵みに満ちた神が統べ治めておられるのだ、今はわからないけれども、神のなさることは、すべて時にかなって美しいのだ、と信じることができれば、わずかばかりでも希望を持って、その日を生きることができるのではないでしょうか。


「漢字の向こうに聖書が見える」のシリーズは、福音歌手森祐理さんのラジオ番組「モリユリのこころのメロディ」で取り上げられました。祐理さんは、CBI Pressから昨年出版されたデボーションガイド、『365日の恵み浴』を使っています。皆さんも、主の恵みを浴びて一日を始めてみませんか?

聖書 新改訳2017©新日本聖書刊行会

この記事は『クリスチャン新聞福音版』2023年6月号(No. 561)より、許可を得て転載しています。